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CORSET - I
DRAWING THERAPY
(2008)





描くこと、着ること

私が提案するのは、精神病治療のひとつである絵画療法に、ファッションの要素を加えた新しい自己表現方法です。描くことは内向的な表現で、リアクションを求めにくいものです。対してファッションは外向的な表現であり、見られることから実感としてのフィードバックが得られます。枠の違う二つの表現が相乗効果を生み出します。


Drawing, wearing

I would like to propose a new method for personal expression adding the element of fashion as one of the mental treatments, drawing therapy. It is hard to get a reaction from the action of drawing, since it is such an internal form of expression. On the other hand, the fashion is outgoing, so people will be able to grasp a certain reality through the eyes of others. Those two different expressions will produce a beautiful synergy.



3STEPS of mental treatments



STEP 01



過去の自分の服をパッチワークすることで、表現のきっかけをつくる、着られるキャンバス。



At first, canvas has no design; it's just a blank wooden frame. Later, it becomes wearable canvas, the collected clothes worn before and now, put together like a patchwork. One can find one's new self by extracting it from previous identities.



STEP 02



主観的な表現である「描く」ことと、客観的な表現である「着る」ことを、医師や家族との対話とともに繰り返し、徐々に社会性を意識しはじめる「あいだ」のキャンバス。



The canvas is designed to gradually start becoming socially conscious. One enjoys the repetition of "drawing" with mental dialogue and "wearing" conversations with one's doctor or family. The focus is on the contrast between subjective and objective expressions, subjectivity and objectivity.



STEP 03



感情表現の目的を、自分自身の表情の演出に向けた、完全に衣服のかたちをしたキャンバス。



The canvas is designed as clothing to direct the personal expression and turn the internal dialogue outward. The frame is decorate from the torso up to produce a high form of objectivity.



〈神秘的・宇宙的絵画〉を描いている彼らが、画面に身体の一部を押し付け、まさに自己の身体と描画の中の宇宙と一体化したような表現をすることがしばしば認められる



飯森眞喜雄・内田訓『精神分裂病の絵画と言語表現』より​



DESIGN PROCESS



コンセプトワーク × 藤原茂樹博士(精神科医・日本芸術療法学会理事)



田中 現在、ファッションデザインの新しい方向性として、「現代のコルセット」を提案しようと考えています。コルセットを、身体ではなく精神を矯正する装置と捉え、コルセットを身につける事によって自己表現における、自己を拘束する要素(言語や既製概念等)からの解放を促す、というものです。今回、自己表現のヴァリエーションのひとつとして、「描くこと」を選択しました。例えば、誰かがそこに他者を描いたとします。私の解釈が正しければ、その人は、他者を描いたはずの空間に、自己自身を見いだす。その感覚を、自分の絵を着ることで呼び起こせないかと考えました。絵画療法に利用するほか、患者さんの身体を表現するカルテとして利用できるのではないかと考えています。しかし、本を少しかじっただけで、現場もなにもわからないので、提案する資格がありません。絵画療法について、芸術療法について、実際の臨床の場の重みもしりません。実際に現場をくぐり抜けてきておられる先生の目にはどう映るか等、聞きたい事、知りたい事が沢山あります。ぜひ、お力添え願いたいと思っております。


藤原博士 メール拝見致しました。コルセットはとても心理社会的な文化です。そもそも男性から見た美しい女性の姿を投影したもの。女性は投影同一視に暴露され身に着けてきたものです。私はコルセットというとこのように連想し、田中さんの場合は逆に、拘束からの解放という視点で捉えていて興味深く思いました。手段に「描くこと」を選ばれたところも感心致しました。精神分析の最も魅かれる点は、創始者フロイトの正直さです。フロイトは欲望の抑制に神経症の起源を求めました。それはフロイト自身の体験を根拠としているのです。田中さんの言われるとおり、「誰かがそこに他者を描いた」としても自分を描くものです。投影とはそういうものです。絵画療法は描画を介しますので、直接目の前の人間について語りません。その意味では、正直さや真剣味に欠くのかもしれません。以上が感想です。


田中 「投影同一視に暴露される」という表現に、はっとしました。無意識に、コルセットという身体を痛めつける存在があるからこそ、自由を実感することが出来るといったイメージを抱いていたようです。「不自由があって、はじめて自由がある」というような枠組みの中での提案になっていることに気づきました。先生のお話を拝聴し、やはり、この作品を本当に意義あるものにするには、もっと様々な体験が必要だと痛感しました。しかし同時に、身体という具体的なものから、精神という抽象的なものに、コルセットによる負荷を転換する作業は、 現代において、意義ある表現になるに違いないと確信しました。「直接目の前の人間について語らない」、というのが絵画療法の醍醐味であり不安材料でもあると理解したのですが、先生はどのように利用しておられるのでしょうか? また、患者さんと精神科医のコミュニケーションを活性化させる手段としての絵画療法の論は何度か拝見したのですが、患者さんが、画家のように黙々と描く事で自分探しをする場合との違いがあれば、是非教えて頂きたいと思います。


藤原博士 治療の対象となる方が「画家のように黙々と描く」ことはよくあります。この作業や内容(作品)を治療者に示すことが生じた場合、能動的に関わります。その表現が治療目標、例えば現実的に社会に適応する、というものであれば、現実吟味を逸脱し妄想的に拡大する方向の表現には制限を設けます。あくまでも適応的表現を促進させます。治療の対象でなければ、表現の自由です。今後のご活躍を期待しております。




現代のコルセットは
身体ではなく
精神を矯正する。



現代社会は、ますますデジタル化を強める傾向にあります。ブログ等によるネット上での会話を例にとると、表情や仕草のない文字のやりとりは、人間本来の五感を通した意思疎通とは、ずいぶんギャップがあると言えます。


五感に基づいた実感を得られない状況は、精神病を引き起こす最大の要因と言われており、表情や仕草の伴った生活から離れすぎた時、すべての人が精神を病むことになりかねません。そんな時代への危機感から着想し、偏った感覚を矯正するための手段を考えました。


19世紀のコルセット
コルセットは、理想の身体ラインを実現する手段でした。理想が高い程、痛みが増すという単純な要素は、理想と現実のギャップを、常に実感させる力をもっていました。


21世紀のコルセット
デジタルとアナログのギャップを実感できない事が精神病につながるという視点に、コルセットの、理想と現実のギャップを実感させるといった心理的な役割を結びつけ、コルセットを「実感を取り戻すための手段」として定義し直しました。



Today’s “CORSETS”
do not fix our bodies;
they are meant to fix our minds.



There is a growing digital trend in the present day. Blogs, for example, are one way of communicating with others; however, they are actually not a primary method of communication using our five human senses.


Not being able to feel or make use of our five senses leads to mental discomfort or illness. When people start to become separated from the facial expressions and gestures of others, they are affected deeply on a mental and emotional level, for the worse.


19c. corset
A corset is one method for getting the ideal body. The higher the ideal is, the more intense the pain will be. The element of "corset" is very simple, but contains within it the power to realize the gap between the ideal and reality.


21c. corset to realize an image
The focus of the Corset project is based on today's situation in which people can't grasp or transcend the gap between digital and analog worlds, which can result in mental illness. The great gap between the ideal and reality is also devastating both in terms of psychology and practice.Re-defining the everyday object of the corset is a way to take us back to reality and reclaim it.



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